肩こり
肩こりの大切なポイント
- 頭や顎が前に出る筋骨格の構造的なゆがみを調整する
- 自立神経のバランスを整え、緊張を緩める
- 胸郭に腹炊きかけて、呼吸器の働きを改善する
日本人の国民的な問題になっている「肩こり」。
「肩こり」は首、肩周辺の筋肉硬直を伴う違和感の総称ですが、その原因は本当に様々です。
- 頭や目、手先を使いすぎる神経の過敏が引き起こすもの
- 頭や顎が前に出るような姿勢、特に猫背など骨格的な歪み
- 肩甲骨や鎖骨、肋骨がロックして起こる血液循環不良や呼吸の低下
そもそもどうしてこの場所に「こり」が起こりやすいのでしょうか?
実は、この場所は頭から背骨の[縦のライン]と、左右の肩から腕を繋いぐ[横のライン]が交錯する人間の要所中の要所になっているところ。
縦のライン→重力に耐えて「頭を真上に乗せる」という構造的な要所。
およそ5㎏もある頭を真上に乗せるためにはしっかりとした平らな土台が必要です。
肩甲骨と鎖骨はこの土台を作るとても大事な役割を持っています。
横のライン→「手・腕を使う」という人間の一番意識的な活動のための基盤。
手は肩甲骨と鎖骨を介して胴体に繋がっています。この横のラインをより自由に使うために肩や背中、胸の筋肉が総動員されています。
繊細な場所だからこそ、多くの筋肉が様々な要求で複雑に使われ、バランスを失いやすくなります。
そして縦横無尽の役割を担っているからこそ、太い神経や血管がたくさん通っており、さらに不調を複雑にややこしくしてしまいがちです。
まずは、「肩こり」には辛さや違和感が出やすい場所ごとに特徴があるので、簡単に挙げていきます。
後頭部から首にかかる、後頭部の際(きわ)のコリ
後頭部の際のコリの特徴
- 目の使い過ぎ
- 自律神経の緊張
- 口呼吸癖
- 顎が出る・頭が前に出る
後頭部の際(きわ)の部分は、自律神経の出所でもあり、”目”の急所としてもよく知られているところです。
ここに「コリ」が出てきてしまうと、
- 自律神経が緊張に傾いてしまうので、全身の緊張が抜けづらくなる
- 頭に血が上りすぎて、全身の循環が悪くなる
というような大きな不調を引き起こしやすくなります。
またここに「コリ」が出てきてしまうと、
- 後頭部を引っ張って、頭を前に押し出す・顎が前に出る
- その結果として顎の骨の位置関係が狂って、顎関節症や口呼吸にもなりやすくなる
というような構造的な問題にも繋がります。
無呼吸症候群と言われる人たちにも典型的に認められる「こり」の部位です。
首の横から鎖骨の方まで違和感を感じるようなコリ
首の横から鎖骨にかかるコリの特徴
- ”胸鎖乳突筋”や”斜角筋”のコリ
- 精神的、感情的に過剰に緊張したり追い込まれている
- 首が回らなくなる
- 鎖骨の位置異常を起こして特に肩口が猫背(丸く)なる
”胸鎖乳突筋”というのは、直接に自律神経の支配をうける珍しい筋肉としてしられています。
だからとても精神的、感情的な緊張が反映されて「コリ」が出やすい場所です。
昔から”借金で首が回らないとき(精神的に追い込まれている)”に緊張、短縮する筋肉といわれます。
首の横のコリは、特に鎖骨や肋骨の位置を歪めてしまうので、
- 腕が捻れて、肩甲骨が前に巻いてくる
- 腕に向かう血管などが通るのを邪魔してしびれなどを起こす
- 猫背になってしまい、頭の土台としてこの場所が機能しなくなる
- 呼吸が浅くなる。
というようないろいろな不調を引き起こしやすくなります。
肩口から肩甲骨にかけてのコリ
肩や肩甲骨にかけてのコリの特徴
- ”僧帽筋”や”肩甲挙筋”のコリ
- 顎が出る・頭が前に出る姿勢の補正に働かされる
- 手先を使う人の肩甲骨の開きの補正に働かされる
- 猫背の補正に働かされる
”僧帽筋”などは有名な[肩こり筋]として知っている人も多いと思います。
この場所はいわゆる「肩こり」の代表的な部分ですが、実は、ここにコリができるのは、必要だからではなくて、周りの無茶に付き合わされて、尻拭いをさせられてしまっているのです。
人間の最も”らしい”活動は
- 目を使って情報を得る
- 手を上手に使っていろいろな作業ができる
- この1,2の活動を束ねてコントロールしている脳の活動
このいずれの意識的な活動も
- 肩甲骨を上に・外側に位置移動させる(肩が前に巻いてくる)
- 背中が丸くなって、呼吸が浅くなる
- 頭や顎が前に出て、頭が身体の真上に乗らなくなる
という不調を引き起こします。
これを行き過ぎないように引き戻すように働いているのが肩口から肩甲骨、背中にかかる筋肉の「コリ」です。
目の使い過ぎは思っている以上に影響を及ぼす
「目」の使い過ぎは、私たち人間の大きな課題です。
現在は仕事でもプライベートでも目からの情報にかなりの部分を依存しています。
「目」からの情報が大脳をグルグル回して、思考や意識を過剰に高めます。
頭がグルグル回って主導権を握った状態が、自律神経が緊張に傾き、血液を頭に集中させます。
東洋医学では「目」は「肝臓」と深い関係にあります。
<目の使い過ぎ(PCの使い過ぎ)〉は必ず、肝臓の反応点の硬直を生みます。
お酒の影響よりもはるかに肝臓を酷使するのかもしれません。
目の疲れからくる肩こりには、目や肩だけでなく、「肝臓」や「自律神経」の調整がとても効果が高いのはこのためです。
③自律神経系の緊張をリリースする大事さ
自律神経の緊張やリラックスの状態は後頭骨に分かりやすく出てきます。
自律神経系は、内臓などの身体の内側の活力に直接関わっています。
だから、後頭骨が弛むだけでも、内臓の働きがとても良くなります。
そもそも自律神経は血液を身体のどこに送るか決めています。
自律神経が弛むと身体はリラックスに傾き、頭に向かいやすかった血液の流れは「内臓」中心に戻ってきます。
だから、内臓が働いて、疲れを癒し、呼吸が深くなるというわけです。
「肩こり」は筋肉の[こり]という問題を超えて全身的な問題点まで浮き彫りにしてくれます。
「肩こり」を変えていく全身的な整体施術
人間は直立二足歩行になる過程で、[背骨の上に頭が乗る]ように進化してきました。
そして、それと同時に[手を自由に使う]ことができるようになりました。
この縦と横の人間らしさのバランスが「肩こり」として出てきます。
「肩こり」が、単に[コリ]自体を緩めても問題の解決になりづらいのは、構造的、精神的、機能的な人間らしさが複雑に影響しているから。
当院では、「肩こり」に対して幅広いアプローチを行なっています。
構造的な狙い
- 頭を背骨の真上に乗せる
- 胸を開き、肩甲骨と鎖骨の位置異常を調整する
- 腕の捻れ・肋骨のゆがみを整える
精神的な狙い
- 頭蓋骨を調整し、自律神経をリラックスに導く
- 骨盤の調整を行い、脳を養う脊髄液の循環を高める
- 脇の下などのつまりを解消し頭から血液が下がるようにする
機能的な狙い
- 呼吸に関わる肋骨・鎖骨・肩甲骨を調整する
- 内臓や肺、横隔膜をリリースする
そんな広い視野で「肩こり」と向き合っていくことがとても大事です。