私たちの身体の約60~70%は水でできていることを知っていますか?
この事実は知識として知っていても、改めて考えると不思議な感覚を覚えます。
水が私たちの存在に根本的な役割を果たしているからこそ、「水分を摂る」という日常的な行為の本質を深く理解することが健康維持には欠かせません。

今回は、水と生命の関係性、そして水分摂取の真の意味について考察していきます。
自然界における水の循環システム
自然界では、水は常に循環し、”リユースされています。
この仕組みを身近な例で考えてみましょう。
水槽の水が汚れた時、対処法は主に二つあります。
一つは水を全て新しいものに入れ替える方法。
これは即効性があり、すぐに水質が改善されます。
もう一つは濾過装置を設置して水をリユースする方法です。
自然界では後者が主となっています。
山に降った雨は、大地というフィルターを通過することできれいになります。
地中の岩石や土壌の層を通ることで、不純物が取り除かれ、ミネラル分が適度に溶け込んだ清らかな水になります。
この過程で、フィルターに捕らえられた不純物や不要物は、微生物などの生命体の栄養としてリサイクルされます。
このサイクルによって、フィルター自体も常にクリーンな状態が保たれているのです。
海水も同様のメカニズムを持っています。
海藻や微生物といった生命体が栄養として水中の物質を利用することで、水質が保たれています。
例えば、夏に発生する「赤潮」は、海水の富栄養化によるプランクトンの大発生ですが、これも一種の「生命のフィルター」現象と言えると思います。
プランクトンが過剰な栄養分を吸収することで、海水のバランスを保とうとする自然の営みなのです。
生命体としての私たちの役割
このように考えると、
私たち人間を含めた生命体全体が、自然界における一種のフィルター機能を担っていると考えることもできます。
私たちは環境から栄養(誰かにとっての不純物や不要物)を取り入れ、自らの不純物や不要物を環境に返します。
そして、それが別の誰かの栄養となる
—このような循環が地球上の生命システムを支えています。
例えば、
私たちが食事から取り入れる栄養素は、植物や動物にとっては自らの一部です。
そして私たちが排出する二酸化炭素は植物の光合成の材料となり、排泄物は微生物によって分解され、土壌の栄養となります。
このように、地球上のあらゆる物質は誰かの「栄養」であり、誰かの「不要物」になるんです。
体内の水循環システム
身体の内にも、水をリユースするためのフィルターシステムが備わっています。
腎臓から膀胱へとつながる泌尿器系は、その代表選手です。
私たちの体内の水分は、常に海水に近い濃度を保つようコントロールされています。
私たちの体液の塩分濃度が海水に近いのは、生命が海で誕生したことの名残とも言われていますが、腎臓というフィルターが常に働き、不要なものを尿として排出することで、体内環境を清潔に保ってくれているんです。
また、血液中の老廃物をろ過する腎臓の働きはとても精巧です。
1日に約180リットルもの原尿が作られますが、そのうち99%以上が再吸収され、最終的に排出される尿は1〜2リットル程度です。
これは極めて効率的なリユースシステムと言えるでしょう。水槽のフィルターは定期的な”交換”が必要ですが、私たちの体内フィルターは身体が自動的に更新してくれるとてもすごいシステムを持っています。
水分摂取の本当の目的とは?
では、私たちが日々水分を摂取する理由は何でしょうか?
一般的に考えられる理由としては以下のようなものがあります。
1. 体内の水分を新鮮なもので入れ替えるため
身体の70%を占める水分を、新鮮なものに置き換えようという発想です。
水槽の例でいうと「入れ替える」という方法に相当します。
確かに、古くなった水よりも新鮮な水のほうが体にとって良いように思えます。
「1日2リットルの水を飲みましょう」という一般的なアドバイスも、この考え方に基づいているかもしれません。
しかし、先述のように人体は既に効率的な水のリユースシステムを持っています。
完全に水を入れ替えるよりも、既存の水を適切にリユースするほうが自然の摂理に沿っているのかもしれません。
2. 体温調節のため
特に日射病や熱射病が起こりやすい夏には、とにかく大量の水分摂取がいわれます。
これは、比熱の高い水分(汗)を利用して熱を排出するためです。
水分を使うことで、多くの熱エネルギーを効率的に環境に放出できるのです。
水は比熱が高いので、汗として水分が蒸発する際に周囲の熱を奪うことで、効率的に体温を下げることができるのです。
これは水の物理的特性を利用した、生命の巧妙な体温調節メカニズムと言えると思います。
でも、
これらの発想は水分を「リユース」するという自然の摂理からは少し離れたものかもしれません。
身体の中にも上で挙げたようなとてもすごい「リユース」して水を綺麗にしながらつかうシステムがあります。
また血液が”必要以上に”汚れたり、ミネラルバランスが崩れなければリユースも簡単になるはずです。
体温調節も自律神経を介してしっかりできるようになると、汗に頼らなくても体温の調整が上手にできるようになってきます。
それであれば、必要以上の水分摂取は必要がなくなってきます。
水が無限に存在し、副作用がないものであれば問題ありませんが、実際には水は私たちの身体に思っている以上に大きな影響を与えます。
身体の70%が水でできているからこそ、その影響力は思っているよりとても大きいはずです。
水は無条件に身体に良いか?
「水は無条件に体に良いもの」という思い込みをお持ちの方も多いかもしれません。
確かに水分摂取は生命維持に不可欠ですが、適切な量や質、タイミングといった条件を考慮する必要があります。
水質の重要性
まず考えるべきは水の質です。
水道水、ミネラルウォーター、アルカリイオン水など、様々な種類の水がありますが、それぞれ含まれるミネラル成分や酸性度が異なります。
例えば、硬水に含まれるカルシウムやマグネシウムは骨の健康に良いとされる一方で、胃腸の弱い方には負担になることもあります。
また、水の温度も重要な要素です。
冷たい水は夏場には体温を下げてくれますが、飲んだ水はまず腸管に接触するため、胃腸に負担をかけることがあります。
反対に、温かい白湯は消化器官を刺激せず、体を温める効果があります。
過剰な水分摂取のリスク
「水分は多ければ多いほど良い」という考えは必ずしも正しくありません。
過剰な水分摂取は「水中毒」と呼ばれる状態を引き起こす可能性があります。
これは体内の電解質バランスが崩れ、特にナトリウム濃度が低下することで起こる症状です。
軽度の場合は頭痛や倦怠感といった不調を感じる程度ですが、重度の場合は意識障害や痙攣を引き起こすこともあります。
自律神経の視点から見ると、
水分摂取の方法や量によっては、体内環境のバランスを崩す可能性もあります。
例えば、過剰な水分摂取は電解質バランスを乱したり、内臓を冷やして活動を抑えてしまったり、むしろ自律神経の乱れを引き起こすケースもあります。
自律神経と水分の関係
自律神経系は体液バランスの調整にも深く関わっています。
交感神経と副交感神経のバランスが崩れると、腎臓だけでなく内臓全体の働きにも影響が出て、水分代謝に支障をきたすことがあります。
自律神経と腎機能の関係
腎臓の血流量や濾過してきれいにする機能は自律神経によってコントロールされています。
ストレスなどで交感神経が優位になると、腎血管が収縮し、腎機能が低下することもありえます。
その結果、水分代謝が滞り、むくみや血圧上昇といった症状が現れることもあります。
反対に、リラックス状態で副交感神経が優位になると、腎機能が活性化し、余分な水分や老廃物の排出が促進されます。
水分摂取と自律神経調整
適切な水分摂取は自律神経のバランスを整えるのに役立ちます。
特に起床時の白湯などは、副交感神経から交感神経への切り替えをスムーズにし、朝の目覚めを良くする効果があると言われています。
また特に暑い夏などはお腹が冷えやすく不調になったり、交感神経が優位になりやすかったりします。
そんな時には熱めのお湯を取ることで、内臓を温め改善する助けにもなります。
また、日中の適度な水分摂取は、血液の粘度を適切に保ち、循環をよくすることで、自律神経の働きをサポートします。
特に自律神経が乱れがちな現代人にとって、意識的に水分の取り方を考えてあげることが重要な要素とになり得ます。
整体施術の現場でも、自律神経の乱れが水分代謝に影響し、むくみやだるさといった症状として現れるケースをよく目にします。
逆に、適切な水分摂取が自律神経のバランスを整え、全身の機能改善につながることも多いのです。
水分摂取を見直す
水分摂取の本質を理解することは、自律神経の健康維持にも重要です。
単に「たくさん水を飲むべき」という一般論に従うのではなく、自分の体調や環境に合わせた適切な水分の取り方が大切です。
身体の中の水をリユースする機能を最大限に活かすことができると身体は内側からかわってくるはずです。
私たちの身体は、70%が水でできている。
だからこそ、
水の特性と付き合い方はとても大事なんですね。